2.産む、産まない
ひと昔前にくらべると、私たち日本の女性は、生きる道の選択肢が格段に拡大した。結婚しなくてもいいし、してもいい。仕事を続けてもいいし、やめてもいい。子どもを産んでもいいし、うまなくてもいい。
10年前の調査になるが、アメリカの大学卒の白人女性が、将来結婚する確率は、30才で20%、35才になるとわずか5%という数字がある。およそ10人にひとりは独身ということになるらしい。
その理由として・・・・
・教育を受ける期間がのびた
・若いときに経済的な余裕がなかった
・仕事第一に考える人が増えた
・離婚に対する恐れが強い(結婚の40%が離婚。その多さが結婚観を幻滅させている)
・独身でいても白い目で見られなくなった
・出産、育児を高年まで遅らせることが可能になった
・妥協を嫌う傾向が強い(男ならだれでもいいというわけにはいかない、ということか?)
(『「結婚」「子ども」どう考えていますか』木元教子、北川真由美著、三笠書房)
日本も、最近はおよそこの結果に近いのではないか。高齢出産が増えているのは、生まない選択をしているというよりも、生む選択を伸ばし伸ばしにしている人が多いという話もよく聞く。
これだけ、女性が男並みに、バリバリ働いているのだから、もっと「生まない選択」をビシッとする人が増えてもいいと、私は思うのだけれど、実際は多くの女性たちが、潜在的に「産む」ということを頭のどこかに入れているようなのだ。
3.母は動物的な仕事だ
しかし、私が考えるに、母をやる、言いかえれば赤ん坊の面倒をみるというのは、妊娠中を含めて、すごく動物的になることなのだ。
たとえば、つわりでやたら気分が悪くなったり、ちょっとしたことでイライラクヨクヨしたり感情的にもなるし、日に日に腹は出てきて、世にいう女の美貌だのファッション性はまったくなくなる。お産は、まさに動物的。
さらに、生まれれば、ギャーギャー泣き叫び、ヨダレはタラタラ流す、まさに野獣のような赤ん坊と、毎日格闘しなけりゃならない。子どもって、大人が想像する以上にすごいエネルギーの持ち主だから、その面倒をみるってことは、動物サーカス団の調教師、はたまた野性動物サンクチュアリの監視員に相当する。
それは、スーツを着て、ヒールの靴で、どろ水に飛び込んでいくようなもののように、私には感じられる。
仕事をエレガントにこなし、キャリアを積んで男並み、あるいはそれ以上に仕事をしてきたインテリで都会的な女性が、どろどろしているとも言える『母』という作業に身を投じようとする姿勢に、 私は純粋にフシギだなあ、と思ってしまう。しかし、子どもの数が少なくなっているということは、このへんにも関係がありそうだ。
大手出版社に勤めるある女性は「産休だけをとって、生後2ケ月から仕事に復帰した。家に帰ると、家事と育児に追まくられて、ゆっくりする暇もない。子どもは実家に預けているので、残業は今までどうりにできる。あまり残業が続くと、子どもになんだか悪い気になって、帰宅途中に寿司折を買って帰ったりすることもある。まるで、オヤジですね。正直言って、家にいるときより、会社にいるときのほうがリラックスできる。母親というより、父親感覚ですね」と話してくれた。
はらむ、産むは女性にしかできないけれど、育てるのは男女関係なくだれにでもできる。稼ぐことも、男、女関係なくなっている。
動物的な子を育てる『母』は、生理的な『母』と育てる『母』がかならずしも同じでないという時代に、日本も突入しようとしている。
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