電磁波関連書籍
いろいろある電磁波の種類
「電磁波」と聞くと、「TVやパソコンなどから出ている電波」を思い浮かべる人が多いようです。しかしそれは、たくさんある電磁波のなかのごく一部でしかありません。
家庭や職場、電車内や道路などの街なかも含めて、私達の周りには何種類もの電磁波が溢れています。
そもそも電磁波というのは、何なのでしょう?
それは、電気と磁気の両方の性質をもつ光速の波のこと。電気が流れるところには必ず電磁波が生まれます。この電磁波は周波数(※)という1秒間に生じる波の数の違いで種類が変わります。周波数の高いものから言うと、放射線(ガンマ線、X線など)、光の仲間(紫外線、可視光線、赤外線)、そしておなじみの電波(携帯電話 TV放送、ラジオ放送、携帯電話など)があります。また、周波数が非常に低い電磁波のことを「超低周波」といい、送電線や家庭用の電化製品から発生している電磁波はこれにあたります。
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電磁波の種類と利用例 |
電
磁
波 |
| 種類 | 周波数(Hz) | 波長 | 利用例 |
放射線 (電離放射線) |
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1/10,000,000mm |
1/100,000mm |
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光(太陽光) |
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1/10,000mm |
1/100mm |
1/10mm |
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電波 (非電離放射線) |
マイクロ波 サブミリ波 |
ミリ波(EHF) |
センチ波(SHF) |
極超短波(UHF) |
超短波(VHF) |
短波(HF) |
中波(MF) |
長波(LF) |
超長波(VLF) |
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1mm |
1cm |
10cm |
1m |
10m |
100m |
1km |
10km |
100km |
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光通信システム |
レーダー |
電子レンジ 携帯電話 |
警察・消防通信 |
FM放送 テレビ放送 |
アマチュア無線 |
AM放送 |
船舶・航空機用通信 |
電磁調理器 |
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電磁界
| 超低周波(ELF) | 50〜60Hz | 6,000km | 送電線 家庭電化製品 | |
※「周波数」=1秒に作られる波の数。どの電磁波も光速(1秒間に地球を7周半まわる速さ)で進むことは同 じですが、波の数はそれぞれ違います。
その1秒間に、何回波が生じたのかを表すのが周波数。その単位をHz(ヘルツ)といい、1秒間に1 回波が生じれば1Hz、1000回だと1kHz(キロヘルツ キロは1000という意味)、 1万回だと10kHzと数えます。
電界と磁界・・・電磁波のすがた
表のように、たくさんの種類がある電磁波ですが、空間を移動してゆくメカニズムは同じです。空間を伝わってゆく波を作っているのは「電界」と「磁界」と呼ばれるもの。このふたつが働きあってからみ合いながら、電磁波は空間を進んでいます。
電磁波と電気はどう関係しているのでしょうか?
電気といえば「電圧」と「電流」がお馴染みの言葉です。水を流すためには、水圧が必要ですが、電気ではこの水圧にあたるのが「電圧」です。また、水の流れが「電流」に相当します。
プラスチックの下敷きをセーターなどでこすって頭に近づけると髪の毛が逆立つのは、静電気によって生じる「電界」によるものです。通常(+)と(−)の電気があると、この間に電圧が生じて「電界」ができます。空に雷雲ができれば、雷雲と地面の間に「電界」が発生します。電界の強度は V/m(ボルトパーメートル)という単位で表されます。「電界」は、「電圧」がかかっているもののまわりに必ず発生します。電圧が高いほど、強い電界が発生します。
方位磁石が常に南北をさすのは、地球自体が大きな磁石であるためです。その「磁界」の強さは日本では500ミリガウス程度であり、この中で私たちは生活していることになります。磁石の近くに砂鉄をまくと、N極とS極の間を結ぶ幾つかの筋ができます。これは、「磁界」の働きによるものです。
「磁界」の単位はテスラ(T)やミリガウス(mG)を使います。「磁界」は、磁石のまわりだけでなく、「電流」が流れているもののまわりに必ず発生します。強い電流が流れるほど、その周りに強い磁界が発生します。
日常的に経験することで言うと、コンセント(電源)に差し込むとコードには「電圧」がかかり、その回りに「電界」が発生します。電灯のスイッチを入れるとコードには「電流」が流れ、その回りに「磁界」が発生します。
世間を騒がす「電磁波問題」とは?
今いちばん社会で問題となっているのが電磁波のなかの「電波」と「超低周波磁界」。私達にとって最も身近なこの二つの電磁波が、体に悪影響を与えるのではないかと心配されています。
まず「電波」について一番心配されているのが、今やほとんどの人が持っていると思われる携帯電話。
この携帯電話には、電子レンジと同じ仲間であるマイクロ波が使われているということはあまり知られていません。電子レンジは早くから電磁波の影響が取りざたされ、 シールド技術などによって対策がなされています。しかし、携帯電話は直接頭部に密着させるためにいっそう配慮が必要であると思われるのに、まだ対策が十分とはいえないのが現状で す。
携帯電話端末からの電磁波により、遺伝子を損傷したりして脳細胞にダメージを与え、脳腫瘍を引き起こすのではないか、幼い子供の脳の生育に悪影響をもたらすのではないかといった懸念があり、現在世界各国で研究が行われています。米国のFDA(食品医薬品局)は2001年に「有害かどうかをはっきりさせるまでにはかなりの年月が必要」といったうえで、「影響がないというわけにはいかない」という見解を述べています。WHOでも同様の見方をしていて、2005年くらいまでには携帯電話の健康リスクについての見解をまとめる予定だということです。
もうひとつ心配されているのが、最近ニュースでも耳にするようになった「超低周波」です。
これは、主に送電線や家電製品から出ている、50あるいは60Hzといった周波数の電磁波。この電磁波が生む磁界がある場所、つまり高圧送電線などの周囲では、 子供の白血病の発生率が上がるとのデータが世界各国で報告されています。
WHO(世界保健機構)の付属機関では、2001年10月に極低周波磁界は「ヒトに対して発ガンの可能性がある」と発表。「4ミリガウス以上の磁界では「小児白血病の発症が2倍に増える」と分析しました。
日本の国立環境研究所でも「子供部屋の平均磁界レベルが4ミリガウス以上で小児白血病のリスクが上昇する」と報告しています。
電磁波から身を守るには
磁波の害はまだはっきりとはしていませんが、アメリカでは州ごとに規制を設けたり、スウェーデンでは幼稚園、小学校の近辺から鉄塔を移転させたりといった配慮がされています。
しかし、今の日本では電磁波、とくに超低周波の磁界に関する規制は全くありません。そのため、上のような問題があることをまず知り、自分で気をつけることが大切になってきます。
対策法のまずひとつめは、発生源からなるべく身を離すことです。
電磁波は、距離とともに急激に減るという性質があります。TVやパソコンはなるべく体から遠いところへ置く、子供部 屋には強い電磁波を出す電化製品をおかないなど配慮を。からだに密着させて使うもの(たとえば電気カーペットや携帯電話など)は要注意です。
なるべくなら高校生以下の子供には携帯は持たせない方が無難。英国では2000年に、16才以下の 子供は携帯電話の使用を控えるようにと勧告を出しています。
また、電磁波を長時間浴びないことも有効な対策。
携帯電話やパソコンの使用はなるべく短く、家電も待機電力を使うものは電源をこまめに切ることを習慣づけて。 省エネにも役立ちます。
一日数時間を過ごすベッドの近くには、テレビやラジカセなどコンセントに差したままの家電製品は置かないようにしましょう。とくに頭部のある枕の近くは避けるべきです。
生活のあらゆる場所にある電磁波を完全に避けることはそもそも無理ですし、そう神経質になる必要はありません。しかし、まだ健康被害のメカニズムがはっきりしない以上、身体に浴びる電磁波をなるべく低めに抑えていくよう気をつけるようにはしたいものです。