おひさまの贈りもの
垣内磯子/作 スズキコージ/絵 けやき出版
さあ、夏だね。今年はどんな思い出ができるかな。特別なことじゃなくていいんだ。たったひとつの道具にも・・・こんなふうに、思い出が潜むことがあるからね。
今年の夏
大きなやかんがいらなくなった
夏ごとに
麦茶をつくっていたアルミのやかんだが
長男は結婚し
娘たちは地方の大学へ出ていった
去年までは
一日二回
麦茶をわかしたやかんだが
夏真盛り
流しの下の一番奥で
日が日が名な一日
しのびやかに思い出を沸かしている
自分探し! 専業主婦からの脱出! と賑わう一部のマスコミ。
何も見つからず、今は少しも余裕がもてない母たちにはツライ時代だ?!垣内磯子さんは、結婚と子育てで17年間中断していた作詩を再び始め、今では詩集、絵本の出版や、コンサ−トの主催等などで活躍中だ。
彼女の詩集は他にもたくさんあるけど、この本の中には、子どもたちへの想いや、生き様や、光、光や妖精もちりばめられていて、子育て中の人には特におすすめだ。
結婚前、仕事を一時あきらめることを、どこか納得できないでいる私の前に、磯子さんは、あたたかいお茶をコト・・・と置いて言ったんだ。
「何かいい仕事がしたいのなら、まず自分が幸せにならなくちゃ。
仕事は後からついてくると思うわ」
幸せをかみしめながら歩いてきた磯子さんの笑顔は、いつもあたたかい。
仕事に走り続け、いつも急いでいた20代が今では遠く時にはのんびりしながら、時にはイライラしながら、将来のささやかな自分の仕事を予感しながらも、
今は人生の休暇・・・と、日々を楽しんでいる私だ。
(文;森 ひろえ)